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元瀋陽総領事松本盛雄先生をお迎えし、「日中関係の現実」を学ぶ

プレスリリース

 12月15日、中国語を学ぶ一年生を対象に、交流センターコンベンションホールにおいて、「中国文化講座」を開催しました。今回は、元外務省職員で、瀋陽総領事など、中国との外交関係の仕事に長年携わってきた松本盛雄先生をお招きし、「日中関係の現実」をテーマにご講演いただきました。講演には、中国語Ⅱを受講している一年生、大学院生、本学教員、合わせて約60名が出席し聴講しました。

 松本先生は、日中の要人が会談を開く際、通訳官として同席し、日本の要人の言葉を中国側に伝える仕事をされていました。そのため、鄧小平、江沢民、朱鎔基など、歴代の中国要人の声を直に聞く機会が何度もあり、いくつかのエピソードを紹介してくださいました。「朱鎔基首相が2000年10月に訪日した際、日本での分刻みのスケジュールを組んだところ、朱首相から、『国内でも私をこんなに忙しく働かせる者はいない』と言われた」とのことでした。

 外務省では、1979年から始まる対中経済協力(ODA)、1987年から始まる中国のWTO加盟交渉、1989年に発生した天安門事件への対応、1992年の天皇陛下の中国訪問、2006年の「戦略的互恵関係」の推進に関する共同声明の策定など、日中関係の重要な事項に携わってきたことを語られました。また、日中関係について、「アジア太平洋地域の安定と繁栄のためには中国の建設的な役割は不可欠であり、日本は、法の支配に基づき、開かれた地域秩序への中国の関与を促してきているように思う、国益重視は外交の基本であるが、日中両国が責任ある「大国」として世界に貢献しなければならず、その中でお互いに利益を得てくべきである」と自らの考えを述べられました。

 「総領事時代は、邦人保護が重要な任務であり、中国国内で犯罪に関わった日本人を保護するために様々な活動をしていて、そんな中で、現地の警察幹部とよい関係を作ることも重要な仕事だった」とのお話がありました。大使館や領事館では、様々な機会にパーティーが開かれていると耳にしますが、交渉は人間関係の上に成り立っており、一緒に過ごす時間を持つことで、相手国側とのコミュニケーションをとっているように思われました。

 「最近は、日中両国民がお互いに相手が「嫌いだ」という話を聞くが、これは相互理解が欠けていることが大きな要因であり、また、「日中友好」という高い理想があるためではないか」と述べられました。「日中両国の外交は長期的な戦略に基づいて処置されるべきであると言われることがあるが、実は現実的な利益が先行する場合のほうが多いそうです。中国は特殊な国だと言う人もいるが、中国の「実態」と中国の「利益」を理解することができれば、中国は比較的分かりやすい国であると感じる」と語られ、「日本と中国は相互に理解することで普通の付き合いができる」と述べて、講演を締めくくられました。

 講演終了後、学生から質問があり、丁寧にご回答くださいました。

 学生たちにとって、日中外交の一端に触れ、日中関係を理解する非常によい機会となりました。

(文責:犬塚優司、丁雷)