学生アルバイトオススメ本

第115回 江戸時代にふれてみたい人にオススメ

オススメ本
  図書館 学生アルバイト 佐藤綾
  私のオススメ
  『あきない世傳 金と銀』シリーズ(全15巻)

   髙田郁著
   角川春樹事務所 2016年2月-2024年3月発行
  

 このシリーズは、江戸時代享保期から始まります。元禄という絢爛豪華な時代が終わり、享保の改革によって質素倹約が奨励されていた時代です。現代で言うと、バブル崩壊後の不況に見舞われていた時と似通っており、そのような、物がさっぱり売れない受難の中で、主人公である幸は摂津の津門村に生を受けます。父から「商は詐なり」と教えられて育ったはずが、享保の大飢饉や家族との離別を経て、9歳で大坂天満にある呉服商「五鈴屋」に奉公へ出されることが決まります。慣れない商家に加え、「一生、鍋の底を磨いて過ごす」女衆でありながら、番頭の治兵衛に才を認められ、徐々に商いに心を惹かれていきます。
 2023年にドラマ化しているため、知っている人はいるのではないでしょうか。私は江戸時代を舞台にした作品が好きなのですが、特に『あきない世傳 金と銀』は、教科書に載るような偉人や出来事をもとにしたものとは違い、江戸時代の庶民の世界を垣間見ることができるため、とても好きな作品です。幸は、相撲や歌舞伎、浄瑠璃の流行りや、服装、食事、唄、江戸と大阪の違いなどを見て商いに活かしていくのですが、そのような庶民だからこその視点が新鮮に感じます。私はこの作品を読んで江戸時代の庶民文化に興味を惹かれ、これをきっかけに卒業論文のテーマを考えました。そのくらい、私にとって大切な作品です。
 商い戦国時代と言われる中で「買うての幸い、売っての幸せ」を追い求めながら、幸は全力で商いに挑み、切り開いていきます。勉強することにだって一苦労しながら、周りの人々に支えられ人生を歩んでいきますが、結婚一つとっても紆余曲折あり、その他にも大不況や天災、病気にみまわれるなど波乱万丈な人生です。
 幸が商いについて真摯に悩み、考え、知恵を絞り、商人として人として育っていく作品です。そんな幸の商道をぜひ楽しんでください。



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